「シンプルな淡彩画を描いてみよう:前編」の続きです。
色を塗る②陰影をつける
ベース色用レイヤーをロックする(※PC版のみ)
この先、ベース色レイヤーは使いません。誤って色を塗ってしまわないよう、レイヤーを編集不可の状態にしておきましょう。
ロックしたいレイヤーにカーソルを載せて鍵マークを表示し、「すべてをロック」を選択します。
陰影用レイヤーを追加する
ベース色レイヤーの上に陰影用レイヤーを追加します。
先に、ベース色レイヤー(レイヤー2)を選択します。それからレイヤーパネルの左下にある「+」をクリックします。
これで新規レイヤー(レイヤー3)は、選択レイヤー(レイヤー2)の上へと配置されました。
これから先はこのレイヤー3を使って作業を進めます。
うさぎの首に影をつける
水彩の設定は先ほどの引き続きで、「Dried Strokes」のプリセットを使っていきます。
豆知識:うすめ液調整のポイント
ベース色を塗る作業で、少しは水彩ツールに慣れてきたかと思います(^^) 一度ここで、水彩の設定項目を確認してみましょう。
ツールピッカーから「水彩」を選択した状態で、「設定」をクリックします。
水彩の設定において、一番重要なのが「うすめ液」です。「Dried Strokes」の初期値は85%になっています。
しかし実際描いたときに現れる色の濃さは、個人の筆圧・ペンやペンタブの筆圧設定にも左右されます。ベース色を塗ったときも、このチュートリアルより若干濃くなった、薄くなったという方がいるかもしれません。
この先は陰影をつけるという、微妙なコントロールが求められる作業に入ります。もし塗ってみて、濃い・薄いということがあれば、うすめ液を数%増減させてみてください。
特に筆圧が強い方は、濃すぎるペイントを塗ってしまうと、パレットナイフできれいにぼかし切れない場合があります。
ウサギの首に影をつける
まずわかりやすい部分として、ウサギの首まわりに影をつけてみましょう。頭部の影が首(このウサギには存在しませんが(笑))に落ちている、というイメージですね。
陰影は、まず元となるペイントを塗ってから、パレットナイフでぼかすという手順で作っていきます。
図を参考に、ウサギの首まわりに色を塗ってください。
次に、ツールピッカーから「パレットナイフ」を選択します。
ペイントをぼかすために、先ほどとは違うプリセットを使っていきます。
ツールピッカーの右にある「プリセット」を開きます。
「Hard Wet Blender」を選択します。
このプリセットを使うと、水で絵の具を溶かしたかのようなぼかし効果が得られます。水彩画では定番のプリセットです。
では、先ほどウサギの首に塗ったペイントをぼかしましょう(^^)
ここでのポイントは、ツールサイズです。100%表示の時の塗りとナイフの大きさを見比べて見ましょう。ペイントに対してナイフが大きすぎると、ぼかしが強力すぎて色が消し飛んでしまいます。
ナイフは若干ペイントより小さいくらいがいいので、今回は「20%」のサイズにしましょう。
ペイントの下の方をなぞって、ペイントをぼかします。決して、全体をぼかすわけではありませんので注意。
今回はキャラクターものですが、特に光源とか高尚なことは考えてません(^^ゞ 輪郭まわりにぐるっと陰をつけて、脇の下など明らかに影が落ちるところに陰影を落としているだけです。
さて。残りの部分は、あとは首まわりと同じ作業の繰り返しです。以下にペイントをつける部分を図示しましたので、ツールサイズを調節しながら塗って・ぼかして陰影をつけてみてください。
もし陰影が目立たなければ、もう一度同じ場所へ陰(影)をつけてもかまいません。また、ペイントを重ね塗りしてからぼかすのもアリです。陰影に違う色を使うのもグー。もうこの辺りはお好みでどうぞ。
色ムラができてしまったら、ぼかす前に修正をお忘れなく(^.^)
これで全体を塗り終わりました。もしウサギにもう少し赤みがほしいなと感じたら、うすめ液を90%にした「Sunset Orange」を追加で重ねてぼかしてみてください。
頭部にだけ「Sunset Orange」を追加してみた例です。
色を重ねた方がいいかな……と迷ってしまったら、とりあえずやってみましょう。
新規レイヤーを追加してそこへ描けば、やっぱりいらないとなってもレイヤーを削除するだけなので楽チンです。
仕上げ
花を塗る
残りは花と表情ですね。先に花の方から行きましょう。
ウサギの色にかかってしまうと面倒なので、レイヤーを分けます。線画レイヤーと陰影用レイヤーの間に、新規レイヤーを追加します。
陰影レイヤー(レイヤー3)を選択した状態で、レイヤーパネルの左下にある「+」をクリックします。レイヤー4が追加されます。
使い終わった陰影レイヤーには、先ほどと同様の手順でロックをかけておきましょう(※PC版のみ)
まずは茎から塗っていきます。カラーは「Electric Lime」を使います。
ツールピッカーから「水彩」を選択したら、ここでプリセットを変更します。ツールピッカーの右にある「プリセット」をクリックします。
「Delicate on Dry」を選択します。
このプリセットは「濡れた状態の絵の具」を表現するためのものです。水分をたっぷり含むため、他の色にふれると滲みます。
「Dried Strokes」の特徴でもあった透明感はありませんが、その分色の発色が鮮やかです。濡れているので1ストロークで描かなくても大丈夫。
では茎を塗っていきましょう。細いのでツールサイズを小さくし、キャンバスを拡大しながら塗ると塗りやすいです。
花は、赤、黄色、薄い黄色(花の中心)の3色で構成されています。黄色から塗ります。
使用する色は「Canary」です。
図を参考に花とつぼみの2箇所を塗りましょう。
次に、花の中心を薄い黄色で塗ります。
この色はCrayolaの色見本にもありません。今塗った黄色より薄い色をカラーピッカーで適当に作って塗ります。ほんのり色が付いたかな?位でOK。
最後に花を塗ります。色は「Wild Watermelon」を使います。
図を参考に花を塗ります。
エッジがギザギザなのは後で手を加えます。今はそのままでかまいません(^.^)
2段階でぼかす
赤と黄色の境界をぼかしていきます。
※今回は作業する領域が狭いため、色が輪郭からあふれたり、ぼかしによって色むらが生じるもしれません。あとで修正タイムがあるので、今は気にしなくてかまいません。
ツールピッカーから「パレットナイフ」を選択した状態で「設定」を開きます。
プリセットを「Hard Out Smear」に変更します。
現在のプリセット名(「Hard Wet Blender」)の右にある「>」をクリックし、「Knife」の一覧から変更することもできます。
今回は弱めの力でペイントを引っ張りたいと思います。そこで「筆圧」のみ「30%」へ変更します。
ツールサイズを「10%」にします。赤いペイントを花の中心へ向けてひっぱります。ただし、中心とは少し隙間を空けて黄色が見えるようにします。
続いて、赤と黄色の境界をぼかします。プリセットを「Hard Wet Blender」に変更します
まずは赤と黄色の境界をぼかします。それから花弁の中に色むらがある場合には、その部分もぼかします。
赤と黄色が1つの花弁の中で一体化した状態を作るのがポイントです。上手にできると、花の中心がぼんやり光ったような仕上がりになります。
ギザギザエッジや色むらを修正する
プリセットを「Hard Out Smear」に戻して、修正を行います。
ギザギザのエッジをきれいにし、隙間があるところは隣接するペイントをひっぱって埋めます。
ツールサイズをかなり小さく(1~5%くらい)するとやりやすいです。
つぼみも同様にしてぼかし、仕上げます。
お疲れさまでした。最後は花弁に模様を散らして、花は終わりです。
ツールピッカーから「水彩」を選択した状態で、「プリセット」を開きます。
「Watercolor」の中にある「Dried Strokes」を選択します。
ツールサイズを「20%」にして、左図のような感じで点を描いていきます。ペンであれば、トン!トン!とペン先で軽く突くようにして描きます。
目を塗る
さて。山場はこれで越えました。完成まであと一息です(^.^)
ウサギの目を塗っていきます。
目のハイライトは通常塗り残しで表現する色「白」ですが、それだと目のエッジが汚くなります。そこで、黒のペイントに白を重ねるというやり方で描きます。
レイヤーは現在の花用レイヤー(レイヤー4)を引き続き使用します。
プリセットを「Dry On Wet」に変更します。このプリセットを使って描くと、エッジが滑らかで発色が鮮やかな塗りができます。
このまま使うと黒目だけ目立つ仕上がりになります。そこで「うすめ液」を「20%」まで上げて、ペイントを少しだけ薄くします。
使用する色は「Black(Crayola)」です。
目を丸く塗ります。グルグルと中心から円を広げるように描いていくと、1ストロークで丸を描きやすくなります。
うまくできなかったら、パレットナイフの「Hard Out Smear」で外形を整えてもかまいません。
目にハイライトを加えます。ハイライトは白を目立たせたいので、「うすめ液」を再び「0%」に戻して描いていきます。
使う色は「White(pure)」(R:255 G:255 B:255)です。
もし大きくはみ出てしまったり、形がいびつになったりしても大丈夫(^^) パレットナイフの 「Hard Out Smear」を使って整形すればOK。
頬紅を入れる
引き続き花用レイヤー(レイヤー4)を使用します。ウサギの頬に赤みを入れます。
やり方はベース色を塗った時と同じです。水彩の「Dried Strokes」ので塗り、パレットナイフの「Hard Wet Blender」でぼかします。
使用する色は「Wild Waternelon」(R:252 G:111 B:135)です。
口を塗る
同じレイヤーで作業します。線画の鉛筆線を水彩に置き換えます。
水彩のプリセットを「Dry On Wet」へ変更します。使用する色は「Cotton Candy」です。
ツールサイズを小さくして、唇の線をなぞります(※鉛筆の線は後ほど削除します)
背景に影を入れる
新規レイヤーを一番下(ベース色用レイヤー2の下)へ作成します。
カラーピッカーの右上にある「レイヤー」を開きます。
「+」をクリックして新規レイヤー(レイヤー5)を追加したら、そのままドラッグして一番下まで移動します。
透明感のある影にしたいので、水彩のプリセットは「Dried Strokes」を使います。
色は「Periwincle」(R:204 G:211 B:232)です。
今回はウサギの右側に影を入れてみました。もっと濃い影にしたい場合にはうすめ液の量を減らしてください。
ウサギ本体に影がかかってしまうと色がかぶってしまいます。もしかぶってしまったら、後から消しゴムで削除します。
線画を水彩になじませる
本当にお疲れさまでした。これが最後の作業になります。
線画レイヤ(レイヤー1)ーの不透明度を下げて、鉛筆の線が水彩になじむようにします。
なおこの作業はレイヤーにロックがかかっているとできません。PC版をお使いでロックをかけている方は、線画レイヤーの鍵マークをクリックし、「すべてをロック」を外してください。
不透明度を設定するアイコンは、レイヤーサムネイルの左下にあります(カーソルを載せると見えます)。
アイコン上で上下にドラッグすると不透明度を変更できます。少しずつ薄くして、様子を見てみてください。
ちいさなアイコンで操作しにくければ、クリックして数値入力も可能です。
先ほど口を塗った方は口の部分の線画を消しゴムで消してかまいません。
これで完成です\(^o^)/
よくある質問
- 水彩の「Dried Strokes」は1ストロークで描かないと色むらが出来てめんどう。ベース色は「Delicate On Dry」で塗ってはだめ
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「Delicate On Dry」をご使っていただいて、問題ありません。今回の手法では透明感のある絵にしたかったので、「Dried Strokes」を多用していたにすぎません。これはあくまで私のやり方です。
個々人好みの描き方があると思いますのでいろいろ研究してみてください。
- 描き終わってから、全体的に色が薄すぎたと気付いた。今さらベース色に重ね塗りはできないよね?
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大丈夫です(^^) 新規レイヤーを追加して、うすめ液の量をかなり多め(92%~98%くらい)にして色を重ねてみてください。下にくるペイントの状態にもよりますが、色むらにならないで重ね塗りできると思います。
特に「Dried Strokes」だと透明感があるので目立ちにくいです。
単純に色を濃くしたければ、ベース色レイヤーを複写するのも手です。
- 元々は紙で水彩画を描いていた。ホルベインとか水彩絵の具の色見本はないの? コバルトブルーなどおなじみのカラーで塗りたい
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Artrageユーザーによって、ブランド画材の色見本が多数配布されています。お好みのものを試されてみては?
日本でおなじみのホルベイン水彩絵の具でしたら、以下のユーザーフォーラムの投稿で色見本が配布されています。3番目の返信(#3)に出てくる「Holbein – Watercolor (108).col 」がそうです。https://forums.artrage.com/showthread.php?29448-Real-Paint-color-values
- 毎回プリセットを選びなおすのがめんどう。もっと楽な方法はないですか
-
プリセットは必ず使わなければいけない機能ではありません。「設定」の中身を自分で変更しながら使う、というやり方もできます。
とはいえ、「設定」の内容をその都度いじるのがめんどう。結局はよく使う設定をオリジナルのプリセットとして登録するという方法に落ち着くのではないかと思います。プリセットにはツールサイズや色も含めることができます。(追記2019/02)ArtRage5から、ツールボックス機能が搭載されました。このツールボックスにお気に入りのプリセットを入れておけば、1クリックで簡単に切り替えできます。