時短スタイルか。じっくり描きか。絵の完成にかかる時間も重要

花スケッチの所要時間
目次

1枚の絵にかかる所要時間、気にしたことはありますか

同じ水彩画でも、絵のスタイルによって完成までの時間が変わる

上の2枚の絵を見てください。種類こそ違えど、同じ公園で同じ季節にスケッチした花の絵です。

実はこの2枚の絵、制作時間がまるで違います。ご想像してみてください(^^)

答えは……

左手のスイセンはスケッチ込みで30分、右のサザンカは気の向いたときに少しずつ色を重ねて――3日かかっています。同じ花スケッチでも、絵のスタイルが変わるとこんなに差が出るんです。

美術館などでぱっと絵を見たとき、1枚の絵にどれくらいの所要時間がかかるものなのか。一度は気になったことがあるのではないでしょうか。

そして短時間で描いた絵がダメで、長い時間を描けた絵の方が素晴らしいわけでもない。この事実もよくご存じかと思います。

絵はその描き方によって、完成までの時間が大きく変わります。その結果同じ画材であっても、同じモチーフを描いても、まったくテイストの違う作品に仕上がります。

自分にあっているのは時短スタイル? それともノーマルスタイルの絵?

絵を始めようと思って、絵画教本や教室のお世話になろうと考えたとき。そこで提唱されているスタイルの絵だと、1枚辺りどれくらいの所要時間で描けるのか。

これはとても重要な問題です。その絵のスタイルによって、趣味として続けていきやすいかどうか変わってくるからです。

でも実際はお手本の絵を見て、好みかどうかだけで選んでしまう方がほとんどではないでしょうか。私もそうでした……。

ざっくりわけてしまうと。絵には「時短スタイル」とそうではない「ノーマルスタイル」があります。

始める前にぜひ一度、「自分が絵にかけられる時間」「時短とそうでないスタイルの表現」について考えてみてください。

あまり時間がとれない方に、じっくり型は難しいかもしれません。今流行りであっても、時短スケッチの簡略さはあなた好みの表現ではない(描いていても楽しくない)かもしれません。

街スケッチや旅スケッチ向き、時短スタイルの絵

図書館や書店の絵画教本コーナーへ行って、いろんな教本を手に取ってみてください。

山田雅夫・著の『15分スケッチ』や伊東啓一・著の『ぱぱっとスケッチ』など、時短スタイルの教本がいくつか見つかるかと思います。

これら時短スタイルの絵は、なんといっても絵の完成までの所要時間が短いのが特徴。その分細部まで描き込む時間はないので、大胆に省略したり、モチーフから受けた印象をメインに描くことになります。

時短でサクッと描けるので、旅スケッチ・街角スケッチを楽しみたい人にはまさにピッタリのスタイルです。

短時間で描き終わるので、多忙な人でもこのスタイルの絵であれば続けやすいのがメリットです。ちょっとした隙間時間を利用して絵を描けるからです。

デジタルで描くのであれば、iPadなどタブレットとの相性も抜群。

一方で、モチーフの細部まで描き込まないと気が済まない、色を何層にも重ねるのが好き、という人だと物足りなさを感じるかもしれません。

じっくり時間をかけてモチーフと向き合うノーマルタイプの絵

特に時短で描けることをうたっておらず、時間をカットするためのテクニックも出てこない。これがノーマルスタイルを扱っている教本になります。絵画教本の大半はこちらになります。

ノーマルスタイルの絵は短時間で仕上げることにこだわらず、存分にモチーフと向き合って描きます。何度も色を重ねなければ生み出せないような、深みのある表現にも挑戦できます。写実的な絵、植物画のような精密画も含まれます。

このスタイルの絵は描くための時間をしっかり確保して、描き始めることになります。定期的にまとまった時間がとれない人だと、続けるのは少し難しいかもしれません。

また時間がかかるということは、それだけ集中力を要するという意味でもあります。コツコツ作業が好きな人には向いていますが、そうでない人にとっては苦痛となる可能性も。

時短スタイルとノーマルスタイル、両方使えると便利

野外スケッチの体力消耗を軽減する時短スタイル

私自身はどちらのスタイルかというと、基本的にはノーマルスタイルの絵を描いています。

下書きスケッチもそれ自体が作品として見られるレベル(着色がなくても絵として成立する)まで、きっちり描き込みたいタイプです。

でも公園で花スケッチを始めるようになってから、時短スタイルの水彩画の研究も始めるようになりました。このページのトップでご紹介したスイセンはその試験作だったりします。

なぜ時短スタイルに興味を持ったか。理由は簡単。屋外で長時間立ちっぱなし、座りっぱなしは足が疲れるから。

暑さ寒さの問題もあります。真冬だと外で1時間もスケッチしていれば、かなり凍えてしまいます。スタイルの描きわけができれば、春はノーマルスタイル、冬は時短スタイルと切り替えができて便利かと。

野外スケッチは使える時間が限られている

それからもうひとつ、その場で着色して完成させたいというのも理由です。

普段の絵のスタイルだと着色だけで2・3時間かかるので、公園では完成できず、家にお持ち帰りとなります。そしてちょっと忙しくて日が経つと、着色する気が失せてしまうことも。

野外スケッチは生物(なまもの)だと私は考えています。出来ることならその場で完成させて、新鮮な感動を写し取りたいもの。

旅スケッチにしても同じです。ましてや知らない土地で人目を浴びながら描くのは、できるだけ短時間で済ませたいですよね。それにはどうしたって、時短スタイルが適しています。

両方のスタイルは一緒に教えてもらえない

このように、両方のスタイルを使えるとなにかと重宝します。TPOにあわせて、臨機応変に対応できるからです。

もっとも2つのスタイルを同時に教えてくれる、絵画本なり教室はほとんどありません。たいていはどちらかひとつです。両使いになりたければ、自ら進んで複数のスタイルを学ぶ必要があると思います。

個人的には先にノーマルスタイルの絵を学ぶことをおすすめします。

時短スタイルの鍵となる省略は、モチーフをそのまま描く力があることが前提です。

その上で「どこを省略しようか?」と考えます。たとえば花壇をぱっとみて、どこから描いていいのかわからないという初心者さんレベルだと、時短スケッチでも映える構図の見極めができないからです。

そして省略するよりは、しっかり細部まで描き上げる方が集中力を必要とします。この集中力は時間をかけないと育たないこと、またそれなりに疲れることから、絵に対する興味が強い最初のうちに取り組んだ方がいいかなと。

絵のスタイル確立は自分の好みが肝心

働きすぎ日本人と言われるお国柄だけあってか、近年時短スケッチの本がずいぶんと増えました。趣味の絵を描くときでも、時間に追われている人が多いのかもしれませんね。

私の手元にも研究用に何冊かあります。けれどもそのスタイルをそのまま活用するには至っていません。

なぜか。それは私の好みと時短スタイルのテイストが一致しないからです。早く描ける方法は色々ある。でもそのやり方で描いて楽しいか、できた作品に自分で納得できるかというと、今のところ出来ていません。

※あくまで私の感性に合わないというだけの話です。その方の描き方が劣ってるから、という意味合いではありません。

時短で描けると、時間と体力の節約という点では大きなメリットがあります。けれどもその結果として完成した作品に満足できなかったら、やっぱり意味はないと思うんです。

これは食事の問題にも似ていると思います。

栄養補助食品や立ち食い蕎麦で、サクッと5分で食べることは出来る。この場合胃袋を満たすという目的は満たせているので、「味はちょっといまいちだったな…」でもかまわないかもしれません。

でも絵は違います。作品ができればそれでOK、ではないからです。時短スタイルであったとしても、アーティストとして満足できる表現は追求すべきだと私は考えています。

様々な時短スタイルの絵画教本が世にあるのも、描き手各自がそうやって模索してきた結果ではないでしょうか。

補足)絵画教本や教室で絵を習うなら、所要時間による絵のスタイルに注目

初心者だから、絵画教室や教本でしっかり絵を学ぼうという方もいらっしゃると思います。そこでどんなスタイルの絵が採用されているか、ぜひ確認してみてください。

2・3時間もあれば絵は完成するだろうと思ったら、大間違い。

私が受講した、2つの鉛筆画教室(ノーマルスタイル)の例でも。一方の所要時間は3時間、もう一方はなんと8時間以上が常でした(あまりのコツコツ作業に耐えられない人もいる、と雑談の折りに先生は語ってました)。

どちらのスタイルの教室が良い、という話ではありません。あくまで本人の好みとどれだけの時間を絵に費やせるのか、という問題です。

コツコツ大作を作り上げるのが好みという人もいれば、多忙であまり通えないから1回で完結する時短スタイルがいい、という人もいるでしょう。また同じ精密画だとしても、仕上がりの雰囲気はそれぞれ異なります。

体験レッスンだけでは、1枚の絵にかかる平均所用時間は見通しがつきにくいかもしれません。

気になる人はぜひ講師の先生に聞いてみましょう。多忙な生活の中で絵を趣味として続けるには、1作にかかる所用時間はかなり重要なポイントになります。

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