絵のテイストが不安定だと、同じ人物を繰り返し描くのは難しい
絵にテイストなんていらない、と思っていた
以前の記事でもふれましたが、私はその時々の気分と好みでイラストを描いているため、俗に言う”テイスト”というものがありませんでした。
そのため、絵の師匠である妹に作品を見てもらっては、「テイストがバラバラ」と言われたものでした。まぁ確かに、このサイトの作品集だけ見てもいろんなテイストの絵があるような……。
テイストがバラバラと言うことは、良い言い方をすれば様々なテイストで描ける(日替わりだけどw)ということ。別に漫画家でもないし、テイストが固定化していなくてもいいやと思っていたんです。
ところがこの度、新規サイト用に同じキャラクターが出てくるイラストが多数必要になりました。
同じキャラクターといっても、テイストの再現ができない私はここでどつぼにはまったわけです。そこで今回初めて、自分のテイストを見つけるという試みを行ってみることにしました。
私と同じように、「我が輩のイラストにテイストという文字はない!」という方は、今回ご紹介する方法でテイストのしっぽくらいはつかめるようになるのではないかと思います。
絵のテイストは、”目”に大きく左右される
「テイストがバラバラって、どういうこと?」
妹にそう尋ねたことがあります。その時見てもらったのは仕事で描いていた動物のイラストだったのですが、ちゃんと色のトーンやサイズをそろえて描いていました。ぱっと見たとき、同じ雰囲気のシリーズに見えるよう考えて作っていました。
「目が違う」
妹が指摘したのは、目の描き方でした。目の大きさ、位置、間隔など、動物によってバラバラだというのです。
テイストというと、「なごみ系」とか絵から感じる雰囲気ももちろん含まれると思います。
でもその雰囲気がなにで決まるかを考えたとき、目は相当大きなポイントです。人物イラストの目をどう描いているか分析できれば、それがテイストにつながる可能性は大いにあります。
テイストは過去絵の中に眠っている
さっそくこれまでに描いたイラストを分析してみることにしました。
イラストを描いている人であれば、過去の作品の中で「これは好き」「自信作」といったものがひとつはあるのではないかと思います。
お気に入りからパターンを見出すことができれば、テイストとして再現することができます。またすでに描いたイラストを、テイストのパターンに照らし合わせて修正することもできるようになります。
え? お気に入りの絵をレイヤーで重ねた方が早いって? まぁそうなんですけど、それだとなにがテイストを決める要因なのかさほど意識することもなく、記憶にも、手にもインプットされません。
だって、最終的には手で自然と描けるようになりたいですよね? それには「なにがテイストを作り上げているのか?」を知らないことには始まりません。
人物イラストの顔を分析する
分析対象の絵としてチョイスしたのは、このイラスト。選んだ理由としては、二頭身なので短時間で描ける、癖が強くないので様々な場面で使いやすい、といったところです。分析の邪魔なので、服は脱いでもらいましたw
頭の大きさは髪のハイライトにも影響する
さて。まずは手始めに、顔の形を見てみましょうか。イラストの上にアタリ代わりの正円を描いてみます。
頭が円より大きくはみ出しているのがわかります。もしこの追加部分がないと、髪のハイライトが前髪のすぐ上にきて、少し窮屈そうな見た目になりそうです。ふむ、ひとつポイントがわかりました。
目の位置関係は、イラストのテイストを大きく変える
次は、テイストの重要な要素である目を見てみましょう。もしこの目の位置がもう少し上か、下に移動するだけでも、イラストから受ける印象は大きく変わります。
目の横方向は、ちょうど顔の1/4くらいの位置ですね。縦方向は、あごと中心線ラインを3:1に分ける位置に来ます。中心線の少し下、と覚えておけば良さそうです。目のサイズは、いつも”ゴマ粒サイズ”と心に念じれば良さそうです。
口は大きすぎない方が可愛らしい印象を与える
続いて、口です。まず大きさから。高さは目の高さの2~3倍くらい。幅は、目3つ分くらいです。
縦位置は、目の上端とあごのラインを1:2少々に分割する位置に口の上端が来ます。
眉毛は人物イラストの表情と性格を決める
眉毛は人物の表情を作り、そこから想像される性格にも影響します。今回のように単純なイラストだと、眉毛で男女差を表現することもあるくらいです。
高さは前髪にかかるくらい。左右に伸ばして、ちょっとおっとりした雰囲気が出るようにしています。
耳の高さ位置は目を基準に描く
この絵だと、耳は目を中心として描かれています。でも最近は、目の上端に耳の高さを合わせて描くことが多いかな……。過去絵と最近の絵で描き方が変わってる部分はもちろん出てくるので、逆にそこは今をテイストに反映させていいと思います。
前髪は頭部における髪の割合、おでこの広さに関係する
前髪です。髪はその時描くキャラクターによっても変わりますが、目安としては円の上半分が髪になるように描く、といったところでしょうか。
また前髪は、おでこの広さにも影響します。イラストの描き方本には、おでこの広さで人物のおとなっぽさが変わるという説明が出ていました。
人物イラストの胴体を分析する
胴体はかなり細めの楕円形
お次は胴体です。こちらもまずは円を当てはめてみましょう。ふむ、円の上部分が若干上の円に食い込んでますね。
胴体は楕円形です。この二頭身は首がなく、上の一番細い部分は口の幅より若干太いくらい、とかなり細めです。股のラインは中心線の少し下くらいです。最近は短足胴長パターンでよく描いていましたが、こちらの方がスマートでいいかも。
二頭身イラストは腕が届かない範囲に注意
手足も見てみます。腕の方が足より若干長め、降ろすとウエストに届くくらいです。頭身が小さいので、このキャラでは頭のてっぺんに手が届かないですね。
あと前の写真で見忘れちゃいましたが、ウエストは円の中心のやや下に位置します。
頭と胴体のアタリ円の大きさを比較する
これで最後です。頭と胴体の円の大きさを比較してみました。頭の方が胴体よりひとまわり大きい感じです。これまで意識しませんでしたが、少し頭でっかちなデザインで描いていたようです。
分析結果をテイストに反映し、テイストをリニューアルする
いかがでしょうか。他人の絵でもこのように分析すると、絵の特徴がいくつも見えてきたのではないでしょうか。
今度はぜひ、ご自分で描いたお気に入りのイラストを分析してみてください。
お気に入りの絵を分析することで、その当時気に入っていたバランスや描き方が見えてきます。今の描き方と比較し、過去絵の方がよければそちらを採用し、今の描き方の方が良ければそちらをテイストに組み込みます。
こうしてたまに自分の作品を分析し、それをテイストに反映させていくことで、テイストを常にリニューアルしていけます。食べ物の好みが人生の中で変わっていくように、テイストも日々進化していきます。
まさに進化していく趣味。自分の絵の進化を追ってみるのも、お絵描きのひとつの楽しみ方ではないでしょうか。
コメント