本気で描く力を身に着けたい人に贈る、絵画教室の選び方

目次

絵画教室は自力で描く力を育ててくれる場所、とは限らない

自力で絵を描く力が手に入るかどうかは、教室選びで決まる

先日お絵描きカフェに参加してくれた方が、「他の教室にも通っていたけれど、自分で絵を描くことができない(トレースなしで描けない)」そんなお話をされていました。

え、そんなまさか。絵画教室にお金を出して通っても、描けるようにならないなんてあるの?

――きっとそう驚かれますよね(^^) でも実はこれって、よくある話なんです。それには2つのパターンがあると私は考えています。

  • 自力で描けるようになるためのカリキュラムが組まれていない教室を選んでしまった
  • モノよりコトを重視する、その場を楽しむだけでいい方向けの教室を選んでしまった

でも絵画教室に入るのは初めてという方が、ここまで理解してを選ぶのは難しいと思います。入ってからわかることも多々あります。

私もいくつかの教室を経験し、独学でも学んでみて、ようやく「そうだったのか」とわかったのでした。

お金と時間を費やして絵画教室に通うからには、描く力をきちんと身に付けたい。そんな方はこの記事の内容を参考にしてみてください。これまでとは違った目線から選べるようになると思います。

英語教室に通っても英語が話せない人がいる。絵画教室に通っても描けないのは同じからくり

小さい頃から英語教室に通っても、英語を話せるようにならなかったという話をよく聞きます。

歌や遊びを交えた子ども向け英語教室は参加して楽しいし、歌を通じてどんどん英語をしゃべります。

それでも実践力がつくかどうかは、別問題なんです。英語に心理的抵抗がなく、発声の機会に恵まれていてもそれは”慣れ親しんだ”だけ。”使いこなせる”わけではないのです。

慣れ=使いこなしOKと思い込んでいると、「どうして話せないの??」という結果に陥ります。

これ、英語の話だと思われますよね。実はそっくりそのまま、絵画教室にも当てはまる話なんです。

“モノよりコト”タイプの絵画教室はスキル向上を主としないことも

楽しさ一番の教室、スキル一番の教室。あなたはどちらを選ぶ?

最近、習い事の世界は”モノよりコト”だといわれるようになりました。区のビジネス相談で教室の集客について聞いてみると、「絵が描けるだけではもう人は来ないですよ」と言われてしまう時代です。

どういうことかというと。「絵を描くというスキル(モノ)を得るのではなく、絵を描くことで「癒し」や「自己実現」ができる”コト”を重視しよう」、という風潮が強まっているのだそうです。

「絵が主。ストレス解消などの効果がサブ」ではなく、「ストレス解消などの効果が主。絵がサブ」と逆転してるんですね。

その結果、アート系習い事の教室が2極化しているのではないかと思われます。

  • 習い事をスキルアップを通じて楽しむ、お稽古事としてとらえている教室
  • 習い事を癒しや楽しみのツールとして提供している教室

先ほどの英語教室がまさにそうですね。楽しむこと・親しむことに主軸を置くか、実践力の育成に主軸を置くか。教室がどちらの方針をとるかで、そこに通う生徒さんが得られる結果も大きく変わってきます。

なにも純粋な気晴らしとしての習い事がよくないとは、思いません。私自身スキル向上なんて考えず、ただ自分の気晴らしでやっている趣味がいくつもあります。

ただ、「自力で絵を描く力がほしい」という目的で絵を習おうとする場合。これから入会しようと思っている教室が、いったいどちらのタイプの教室なのか。そこは注意深く見分ける必要があると思います

いつまでも生徒の補助輪を外さない絵画教室も描く力は育たない

トレースや塗り絵はあくまで一時的なお助けツール

中には生徒さん側の描く負担を減らすために、トレースや塗り絵を採用している絵画教室もあります(※当教室でも初心者さん向けレッスンでは使用)。

線画を描くってめんどうだし、きれいな線を描くだけでも初心者の方には大変。ここで疲れ果てて、色塗り前にやる気を失ってしまう方もいるほど。

私が生徒さんに塗り絵の提供を始めたのも、線画で消耗するという事態を避けるためでした。

けれども。トレースも塗り絵も、あくまで初心者の方を助ける自転車の”補助輪”のようなもの。頼ったままだといつまでたっても一人で自転車に乗れるようにはならない――自力で描く力はつかない――のです。

“モノよりコト”タイプの絵画教室であれば、それでかまわないと思います。苦労を減らして、楽しみを増やすのは理にかなってるからです。

でもスキルアップを目指していく教室であれば。やはりいつかは、生徒さんの補助輪を外してやる必要があります。

当教室でも塗り絵の提供は初心者のうちだけ。いずれは生徒さん自身で写真から作成する、ゼロからキャラクターを造形するという方向へ変えていきます。

冒頭の体験者さんが通っていた教室は、お話を伺ったかぎりですが、長く通っている方に対しても補助輪をつけたままのようでした。

課題を与えられ続けていると、成長の機会が失われる

毎回課題が与えられる絵画教室も同じです。参加の都度、季節の花が用意されているような教室ですね。

課題を用意されても、描くのは生徒自身だと思われるかもしれません。

でもこれは「餌を与えてくれるのは飼い主で、食べるのは猫」と同じ意味。つまり、エサを自力でとる力はつかない(むしろ弱っていく)のです。

課題が与えられるということは、様々な試行錯誤の機会が奪われることをも意味します。

花1本とテキストが課題に与えられるだけでも、これだけのスキルアップの機会が失われるのです。

  • 初心者向きの描きやすい花の選び方
  • 同じ花の中でも描きやすい株の選び方
  • 混色の配合
  • 色を重ねる順番 など

たとえ写真からトレースして絵を描くケースでも。作品に使える写真の撮影には経験が必要です。

課題を与えられたままだと、自分で絵のモチーフを選ぶ力さえつかない

描きやすい花の選び方なんて、学ばなくてもできると思われますよね。

ところがそうでもないんです。

以前1回完結のスケッチ教室に、自分で選んだ花を持って行ったことがあります。

案内に描かれていたポイント(「花弁が少ないもの」など)を読んだ上で、選んだのですが。実際はとても難易度が高い花を選んでしまっていた、と後で気づきました。

講師の方にも「これは難しいですね」と言われました(汗)。なんとか描いてやろうとトライしたもののやはり難しすぎて、撃沈。

花スケッチの経験を重ねた今なら、この花が初心者向きでないのは一目でわかります。でも当時はそんな当たり前のことさえ、わからなかったんです。

結局のところ、自分で試して、失敗しなければ実践力は育たないんですね。ただ課題を与えられるままだと、自分の実力にあったモチーフさえ選べないんです。まさに自力でエサをとれない飼い猫状態。

描く力が欲しいなら、上級者には自由課題作成が許される教室を

自分で絵となるモチーフを選んで(あるいはゼロから下書きを描いて)、着色まで完成させる。それから、力試しの自由課題としてやらせてくれる。描く力が欲しいのであれば、そんな絵画教室を選んでください。

このように生徒さんの上達に合わせて内容を変えてくれる教室、思ったより少ないのが現状です。

昔ながらのアートスクールではこうしたカリキュラムが確立されていますが、地域の絵画教室ではなかなかありません。

だから教室を離れてひとりになると、いっぺんに描けなくなります。

教室では講師の指示通りにリアルな色が作れても、自分で好きなものを描くときにはどうやって色を作ったらいいのかわからない。どんな順番で重ね塗りしていいのかわからない。理論を学んでこなかったからです。

もちろん、教室で描いたものだったら描けます。

でも描けるといっても、講師の混色・描き方のコピーができるに過ぎません。そこから離れて描こうとすると、たちまち途方にくれてしまうのです。

お試し体験で描く力を伸ばせる教室かどうか、見破るポイント

絵画教室の多くはお試し受講ができます。でも1回参加しただけで、自分が求める教室かどうか判断するのは難しいですよね。

そこで講師の方にいくつか質問をしてみましょう。忙しそうだったら、メールやLINEで後日問い合わせるという手もあります。

「上級者向けのカリキュラムの用意はありますか」と尋ねてみる

過去私が通ってきた絵画教室の中で、生徒さんの上達に合わせたルートを用意してくれていたところはたったひとつだけ。他は季節などにあわせて、毎回違うお題を用意するタイプの教室でした。

ですので、「上級者向けの課題の用意がありますか?」と尋ねてみるのはとても有効だと思います。

毎回楽しんで絵を描いてもらっていれば、それでよしと考えている教室なのか。それとも、生徒さんの力をどんどん伸ばしてあげようと考えてプランを用意している(あるいは対応する意思がある)教室なのか。講師の方の考え方がわかるからです。

自分が求めるスキルを伸ばせる教室か、ミスマッチも忘れず確認

絵画教室によって、伸ばせる絵のスキルが変わってきます。自分が求めるスキルを伸ばしてくれそうな教室なのかも重要なチェックポイントです。

たとえばオリジナルキャラクターを描けるようになりたいなと考えているのであれば、「ここに通えば、キャラの下書きを自分で描く力がつきますか」と聞いてみてください。

描けるといっても、トレースや先生のキャラクターのコピーでは意味がないですよね。

イラストだったら「自分で0からキャラクターを創作できるという意味です」、と目指すところを具体的に尋ねてみてください。

教室によっては、あなたが求めるスキルをそもそも必要としないところもあります

たとえば、あなたは生き生きとした人物が出てくる風景画を描きたいとします。でもその教室においては自然重視の風景画で、街中のスケッチはほとんど行っていないなんてケースも。

話を聞いてみて初めてミスマッチに気付くこともあるので、遠慮せず聞いてみてください。

もし時期が合えば、その教室の作品展をのぞいてみるとかなりはっきりすると思います。

万が一違っていたとしても、良心的な先生であれば「他の教室の方がいいかもしれないですね」とすすめてくれるでしょう。あるいは「今やってないけれど、いずれはレッスンに組み込む構想がある」、など提案に近いお話を伺えるかもしれません。

そうではなく。なかば無理に自分の教室へ引き込もうとするような回答だったら……私なら、ちょっと考えると思います。

質問して不機嫌になった講師の教室は避ける

あまりこういった質問をされる体験者の方は少ないと思うので(私もこれまで聞かれたのは2回だけ)、講師の方によってはちょっとムッとされるかもしれません。

私だったら、その時点でその教室は候補から外します。先生以外の部分でどんなに好印象であっても。

ちょっとした質問で不機嫌になるということは、それだけプライドが高い、または短気な性格、あるいは初心者対応に慣れていない先生だと推察されます。

初心者さんほど頻繁に質問し、同じことを何度も聞いてしまうこともありますよね。そこに対するメンタルの耐久性がない講師は初心者さんの指導に向いていません。

たとえ本を出しているような著名な先生でも、上記に該当するなら避けたほうが無難です。その先生に心酔していて、どうしても習いたいという方でなければおすすめできません。後々嫌な思いをする可能性が高いからです。

どの世界でも、スキルが高い人は指導力も高いと思われがち。でも実際のところ、スキルと教え方はそれぞれ別の能力です。実力はあっても、残念なほどに教えベタというケースは多いです。

それならアーティストとしては平凡、教え方はハイレベルという先生に習ったほうが初心者さんは効率よくレベルアップできます。著名な画家の先生に習いたいのであれば、その後でも遅くはありません。

せっかくお金を払うのですから。このあたりは少しドライでもかまわないかと。上級者向けの課題が用意されていて、カリキュラムは自分が目指す方向にあっている、そして講師自身のティーチングスキル(教える力)が高い。そんなコスパ良く学べる絵画教室を探してみてください。

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